第30回 霊樹寺が買い受けた御本尊 木造釈迦如来坐像(もくぞうしゃかにょらいざぞう)
更新日:2018年7月25日
鷲宮地区の霊樹寺には、県の文化財に指定されている釈迦如来坐像があります。この仏像は、平安時代初め頃の一本造(いちぼくづく)りの伝統を踏襲した作風から、平安時代後期の作とされています。
本像は、もともと鷲宮神社の別当(べっとう)であった大乗院(だいじょういん)の本尊でしたが、明治時代初めの神仏分離政策により大乗院が廃止されたため売りに出されました。それを当時霊樹寺の二十七世高峰宦道(こうほうかんどう)和尚(おしょう)が、同じ庁内の由緒ある古仏をよそに出すのは忍びがたいと買い取ったものです。
その額は、金三十両で、寺の財産(田畑)を処分し十五両を用意しましたが、残り十五両を工面できず、当時琴寄村(ことよりむら)(現加須市大利根地区)の大地主小林官吉(こばやしかんきち)さんに立て替えてもらい、ようやく買い取ったものです。
返済に関しては、十五両返金のめどが立たず、苦慮した住職が檀家の代表と共に小林家を訪ね相談した結果、寺で毎年8月に行う施餓鬼(せがき)の際に、小林家の永大施餓鬼を行うことで肩代わりしてもらうことができました。
この永大施餓鬼は、終戦の年まで行われましたが、物資等全てが不足する混乱の時代だったため、小林家から、この年をもって終わりにしてよいとの話をもらい、その後は、小林家先祖代々一切精霊の位牌をつくり、現在も開山堂(かいさんどう)に安置し、供養しているそうです。
宝永5年(1708)の『大乗院由緒書(ゆいしょがき)』によると、本像は、元は唐招提寺(とうしょうだいじ)(奈良県)の古仏で、大乗院再興に際して、隆光僧正(りゅうこうそうじょう)(生類憐みの令を徳川綱吉に進言した人物として著名)が本尊として寄附したものであったことが知られます。
本像の複製は、郷土資料館に常設展示されています。ぜひご覧ください。
木造釈迦如来坐像
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